日独仏合同コンファレンス「AI FOR SDGS - 環境問題の解決に向けた人工知能(AI)の活用とは?」

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10月24日、ドイツ 科学・イノベーション フォーラム 東京(DWIH東京)は、在日フランス大使館、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と共催で、ドイツ、フランス、日本から16名の専門家を東京に招き、人工知能がいかにして環境問題の解決に役立つのかについて意見交換を行いました。150名を超える参加者がこの1日がかりのイベントに集まり、ライブストリーミング配信もさらに多くのオーディエンスが視聴しました。

セッションは、テーマについて4つの観点で行われました。第1セッションでは、政策立案経験を持つ議員や有識者が、環境問題とデジタル化が、どのように自国の政策に絡んでくるのかについて意見を交わしました。議論の中で、持続可能な社会づくりに向けてAIが果たす役割、特にエネルギー・交通分野において大きな可能性が強調されました。しかし同時に、この可能性を実現するためには国民全体の意識改革が必要になることも指摘されました。

第2セッションでは、農業および土地利用におけるAIの可能性について話し合いが行われました。農業は、地球温暖化に対して特に大きな影響を与えており、世界人口の増加に伴いその需要は拡大するでしょう。ロボットトラクターや作物の成長を確認するドローンなどAIの活用により、生産性と作業効率が飛躍的に高まるほか、水管理の実施で温室効果ガスの削減にもつながります。しかし、問題は、このような新技術をどのように農業従事者に導入してもらうのか、ということです。これを実現するには、環境に負荷をかけないことが経済的なメリットにならなければならないと強調されましたが、現状は厳しい状況です。

第3セッションでは、人工知能を都会から地方まで広く普及させる方法について、スマートシティにおけるAIの活用というテーマで話し合いが行われました。AIの進歩で、CASE(Connected = コネクテッド、Autonomous = 自動運転、Shared = シェアリング、Electric = 電動化)によるモビリティの実現が目前に迫っており、アプリケーションを使って複数経路のコストを比較することも夢ではありません(例:自動運転車のカーシェアサービス)。またAIは「思考構築」でも活用でき、エネルギー消費の抑制方法を自ら探すことも可能になります。しかし、スマートシティのフレームワークを構築するこのような画期的なシステムは、国によって大きく異なります。このことは、スマートシティで処理される膨大なデータを誰が所有するのかという問題にもつながります。民間組織でしょうか、政府でしょうか、市民でしょうか? 加えて、日本とヨーロッパでは、データプライバシー保護について同様のスタンスを取っており、将来の連携への盤石な基盤となり得るという点も挙げられました。

最後のセッションでは、AIを環境分野へ活用した実施例が紹介され、日本とドイツの企業が協働で実施しているバーチャル パワー プラント(VPP)のデモンストレーション計画、AIを活用した気候サービスの提供、気候変動が水産資源にもたらす影響のAI調査、環境破壊の監視に活用される機械学習などが取り上げられました。本コンファレンスでは、AIと気候変動の問題について国境と分野を超えて意見交換を行う重要性が明確になりました。デジタル化およびエコロジー化への移行は、地球規模で実施され、ほぼ社会全体を巻き込むことになるでしょう。

2018年11月には「第1回人工知能に関する日独仏合同シンポジウム」が開催され、AIに対する人間中心のアプローチを連携して推進する共同声明が発表されていますが、本コンファレンスは、そのフォローアップイベントの第1弾として実施されました。12月には、人工知能とヘルスケアをテーマにしたフォローアップイベント第2弾を開催予定です。この2回にわたるフォローアップイベントにより、来年開催予定の「第2回人工知能に関する日独仏合同シンポジウム」ではいっそう活発な意見交換が期待できるでしょう。

今回の3か国合同コンファレンスの開催にあたり、共催の在日フランス大使館および国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、後援の東京大学未来ビジョン研究センター、環境省(日本)、および独立行政法人日本学術振興会(JSPS)、さらには、DWIH 東京サポーター機関をはじめ、ご協力いただいたすべての皆様に感謝を申し上げます。