ヘルスケアの人工知能(AI)には品質基準と医療情報統合データベースが不可欠

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2019年12月2日、ドイツ 科学・イノベーション フォーラム 東京(DWIH東京)は、在日フランス大使館と共催で、「AIとヘルスケアに関する日独仏フォーラム – AIアプリケーションの品質基準と医療情報統合データベース」を実施しました。

2019年12月2日~4日の間「Connecting Europe and Japan – Intelligent Healthcare Applications」という共同タイトルのもと、さまざまなグループを対象としたイベントが行われ、本3ヵ国合同フォーラムでは100名を超える専門家と21名のスピーカーを迎えました。

本フォーラムでは、学会、政策・規制機関、企業・コンサルタント会社、研究資金提供機関といった各界を代表する参加者は、パネルディスカッションの後、「ヘルスケア分野におけるAIアプリケーションの品質基準」と「医療情報統合データベース」という2つのメイントピックに焦点を当てたグループワークに参加しました。

オープニングでは、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)、日本経済産業省(METI)、フランス高等保健機構(HAS)の代表が、AIとヘルスケアに関する自国の政策の枠組みやその論理的根拠、政府活動を紹介しました。どの国も、患者ケアの質の向上と医療従事者の事務作業の負担軽減におけるAIの可能性を認めており、個人ごとに異なる診断・治療を行う患者参加型のヘルスケアの実現に期待を寄せています。同時に、データの質と機密性の保証、患者と医師からの信頼の獲得、データシステムの相互運用の実現に向けた課題も指摘されました。江崎禎英氏(経済産業省、内閣官房健康・医療戦略室次長)の特別講演では、高齢化や生活習慣病の増加などの社会的変化で医療費が増大し、その結果、健康・医療政策は疾病予防や進行抑制の対策を重視しなければならない現状について見解が述べられました。

第1セッションでは、ドイツのデジタルサミットで専門家グループ「Intelligent Networks in Healthcare(ヘルスケア分野におけるインテリジェントネットワーク)」の代表も務めたKlaus Juffernbruch教授(FOM大学ヘルス & ソーシャルマネジメント学教授)を議長に、ヘルスケア分野における臨床用AIアプリケーションの質を保証するための品質基準と規制の方向性に関する3ヵ国のアプローチについて意見が交わされました。日本、フランス、ドイツの各スピーカーは、国内の当局によるAIアプリケーション評価方法は、医療機器に適用される現行の評価方法を基に構築されており、追加の評価基準は作成中であることを説明しました。特に関心が寄せられていたのは、AIアプリケーションが評価項目の審査を待たずに進化を続ける中、評価方法をどのように最新に保ち続けるか、これまで以上にサービスや製品の最適化を促進する償還制度とはどのようなものかという点です。

パネルディスカッションの後、オーディエンスはグループワークに参加し、病院内、臨床試験、データマイニングを用いたがんの診断と治療という、AI活用の具体的な場面を想定して知見を深めていきました。

AIアプリケーションの評価とトレーニングには、膨大な医療データが必要になります。そこで、第2セッションのトピックは、統合データベースを用いたソリューションとその相互運用性に焦点が当てられました。桜田一洋氏(理研医科学イノベーションハブ推進プログラム、副プログラムディレクター)が議長を務め、日本、ドイツ、フランスでの現行のデータベースの利点と限界について意見が交わされました。各パネリストは、ドイツの医療情報学イニシアティブ(大学病院間のデータ相互運用)、フランスのヘルス データ ハブ(健康管理および医療データの統合)、日本における国民の健康を実現するための保健医療データ活用促進に向けた法整備についての現状を説明しました。
グループワークでは、パネルディスカッションの内容を補足するかたちで、安全性と透明性の高いデータ共有システムの提供、統合データベースを通じた起業家のイノベーションの促進、データベースに送られる医療データの質の確保について討論が行われました。

その後のクロージングパネルディスカッションでは、視点をメタレベルに変え、「Expanding human intellect by combining artificial intelligence and humanity: New healthcare in the AI era(人工知能と人間性の融合による人類の知性の進化:AI時代が実現する新しいヘルスケア)」というテーマで意見交換を行いました。各スピーカーは、直観力、共感性、創造力といった、知性と連携して意思決定を行う人間ならではの特徴について話し合いました。議論の中で、AIが人間らしさを獲得する段階まで進化するかどうかも問われましたが、パネリストの間では、ヘルスケア分野のAIは、あくまでも補助であり、医師や医療従事者から仕事を奪うのではなくを支援する役目を果たすものとして見解が一致しました。

DWIH東京は、経済産業省(METI)の後援、およびドイツのDWIH 東京公式パートナーの継続的なご支援のもと本フォーラムを開催しました。在日フランス大使館には共催機関としてご協力をいただいています。本フォーラム終了後、2019年12月3日には、在日フランス大使館主催、DWIH東京後援で、スピーカーの皆様が参加する非公開の専門家ワークショップが開催され、日本、ドイツ、フランスの連携アプローチに向けたトピックやプロジェクトについて、さらに具体的に話し合われました。

2018年11月には「第1回人工知能に関する日独仏合同シンポジウム」が開催され、AIに対する人間中心のアプローチを連携して推進する共同声明が発表されていますが、本フォーラムはそのフォローアップイベントとして実施されました。「第2回人工知能に関する日独仏合同シンポジウム」は、2020年11月18~19日に開催予定です。