日本とドイツのエネルギー転換 – 政策・認識・実践

Five people are to be seen. One of them is a speaker of the symposium. He is holding a businesscard. The other people are holding cups of coffee and one woman next to the speaker is smyling towards the viewer © DWIH/Sofinowski

2020年2月17日、ハイデルベルク大学京都オフィス(HUOK)とDWIH 東京は、約50名の参加者を迎え、「どうする!?エネルギー大転換」展の関連イベントとして、東京・お台場で国際ミニシンポジウムを開催しました。

日本科学未来館で開催された本シンポジウムでは、工学、経済、政策科学などの研究者6名の講演が行われ、日本とドイツにおけるエネルギー転換への政策、認識、実践に関して討論を行いました。

第1セッションは、マキシミリアン・ユングマンHCE所長(ハイデルベルク大学)の講演「エネルギー転換への国内及び国際的な原動力と障壁」の俯瞰的な視点から始まり、続いて山口容平准教授(大阪大学)の「エネルギー転換は従来の技術動向をどのように踏み越えるか?」で疑問が投げかけられ、最後はティモ・ゲシュル教授(ハイデルベルク大学)の「エネルギー転換における世帯の役割」によってミクロの視点に焦点が当てられました。ユングマン所長の講演は政治の観点からの議論で、特に、思い切った手段で再生可能エネルギーの利用拡大を目指す、国連が掲げる相互に関連した持続可能な開発目標について言及がなされました。山口准教授はシミュレーションモデルを紹介して、建築分野における変化の可能性を示唆しました。どうすれば大きくエネルギー転換できるかを説明し、私たちの認識こそがエネルギー転換の成功の鍵であり、それは今も昔も変わらないと述べました。ゲシュル教授は、各世帯に関する課題を投げかけ、現在世帯内行動は「ブラックボックス」であり、その中身の解明は科学者にとって極めて困難であると論じました。同時に、そのブラックボックスの解明に成功した例として、プロジェクトに参加した各世帯のエネルギーコストを大きく削減したメリーランド州の研究グループを紹介しました。

A picture of the panelists. Left to right: Mr. Jungmann, Dr. Yamaguchi, Prof. Dr. Goeschl, Prof. Dr. Ishihara, Prof. Dr. Pfeistecker and Prof. Dr. Tsuchiya in front of the listeners
左から: ユングマンHCE所長、山口准教授、 ゲシュル教授、石原教授、プファイルスティッカー教授、土屋教授

 

短い休憩時間をはさんで登壇者と参加者が親睦を深めた後、第2セッションでは、具体例が紹介されました。石原慶一教授(京都大学)が登壇し、「九州地域を例に、太陽光発電促進のための電気自動車(EV)の役割」をテーマに講演を行いました。石原教授は、九州地方における太陽光発電の大きな成功に引き合いに、ストレージデバイスの需要が高まっている点を強調しました。

そこで、電気自動車のさらなる普及が解決につながる可能性を持つと指摘されました。続いて講演を行ったクラウス・プファイルスティッカー教授(ハイデルベルク大学)は、「エネルギー節制、エネルギー効率、再生可能エネルギーに基づいた地域エネルギーの概念」の中で、基礎物理学を理解する必要性を明確に示し、築年数の古い建物でも、リノベーションにより、持続可能で費用効果の高い建物へ転換できることを、いくつかの例をもって説明しました。第2セッションの最後に、土屋範芳教授(東北大学)が「エネルギー価値学と日本の地熱エネルギー」をテーマに講演を行いました。土屋教授は、日本企業が、地熱エネルギーの活用に関して世界でも卓越した知識や技術を有するにも関わらず、国内で地熱エネルギーの利用が全く進んでいない現状を伝え、地熱エネルギーの積極的な利用を強く訴えるとともに、社会が今一度、発電の価値について考え直す必要性を問いかけました。

公開Q&Aセッションでは、登壇者たちが、両国の教育システムの違い、そして教育システムがエネルギー転換に関する国民の知識にどのような影響を与えているかについて検討、議論が交わされました。ほかにも、原子力について、またドイツが石炭火力発電と原子力発電を早急に廃止することに関する質問がありました。