第1回人工知能に関する日独仏合同シンポジウム

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11月21日から22日まで、ドイツ 科学・イノベーションフォーラム(DWIH)東京は「人工知能‐国際的研究と応用:第1回日独仏シンポジウム(Artificial Intelligence–International Research and Applications: 1st Japanese-German-French Symposium)」を開催しました。日独仏三カ国から、65名の高名なパネリストと350名を超える参加者を集めたこのシンポジウムは、現代の最も重要なテーマの一つに関して活発な議論の場を提供しました。

「人工知能」は広範囲に及ぶテーマで、ほとんどすべての官民の部門と学術研究分野に関係します。その意味で、AIに関して学際的なだけでなく国際的な交流をも促進させるというDHIHのシンポジウムの目標は野心的なものでした。しかし複数の理由から、日独仏はいずれもAIの交流強化に関して高い潜在能力を有していることがすぐに明らかになりました。マーガレット・ウィンターマンテル教授(ドイツ学術交流会会長)は、主催者であるドイツ 科学・イノベーションフォーラム(DWIH)東京に代わって述べた歓迎の挨拶の中で、その理由として3つを挙げました。すなわち、ドイツ、フランス、日本はいずれも素晴らしいリソースを有し、同じような価値体系を共有し、古くからの協力の伝統があるということです。ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン駐日ドイツ大使と、ローラン・ピック駐日フランス大使は、AIが私たちの社会に及ぼす影響に関して、三カ国間で交流を進めることの必要性を強調しました。話し合いのための政治的枠組みを用意する日本、フランス、ドイツのAIに関する国家戦略に基づき、各国の代表はそれぞれのAIに関する国家戦略の基礎を紹介しました。科学技術政策担当内閣府特命担当大臣の平井卓也氏は、日本のAI戦略の中心となる目標は、技術発展がもたらす変化に対して日本社会が備えさせることだと強調しました。日本の戦略は、尊厳、多様性、持続可能性といった価値から成る「人間中心のAI社会」というビジョンを掲げています。フランスの戦略は、フランスのAIが前提とする報告書を作成するタスクフォースを率いている、世界的に有名な数学者のセドリック・ヴィラニ氏によって示されました。ヴィラニ教授は、現在我々が直面している世界規模の熾烈なAI競争の中で、巨大なデータベースやコンピュータの計算能力だけでなくAI研究に貢献し得る人材にも競争が集中していると言います。彼は、国境を越えたデータと能力の共有は戦略の中心的なガイドラインの一つであると指摘し、共通の価値観の重要性を強調しました。「データは信頼できるパートナーとしか共有できません」と。出来たばかりのドイツのAI戦略は、連邦教育・研究省(BMBF)のヘルベルト・ツァイゼル(Herbert Zeisel)博士によって示されました。博士は、将来性のあるAI研究者にとって魅力的な研究環境を作り上げる必要性を特に強調しました。社会によるAIの受容も、ドイツのAI戦略が取り上げる重要なテーマです。「これは技術を制御可能なものにすること、そして個人データを保護することなどを伴います」とツァイゼル博士は言います。

AIとHI:協力、共進化、そして共存?

シンポジウムでも繰り返し上がった疑問が、人間と機械の関係性、そしてそれが将来的にどのように進化していくかに関するものでした。

人類にとってのAIの大きな潜在力は、ウォルフラム・ブルガルド(Wolfram Burgard)教授(フライブルク大学)による基調演説の中で言及されました。その中で教授は、飢餓や医療へのアクセスの制限など、世界中の多くの人々が抱える実存的な問題の解決にAIがどのように役立つかという点に光を当てました。

ドイツ人工知能研究センター(DFKI)のアンドレアス・デンゲル(Andreas Dengel)教授は基調演説の中で、自己学習機械を「私たち自身の感覚を補完し、私たちの理解、記憶、行動を助けてくれる知性増幅装置」として使用できると述べました。

人工知能研究センター(AIRC)の辻井 潤一博士は、AIと人間の知能(HI)の「共進化」を視野に捉えました。人間の邪魔をしないようにプログラムされた自動ロボットを用い、AIRCはAIと人間の「共存」に研究活動の焦点を絞っています。次のステップは、AIとHIとが共に現実の世界を造り上げていく「共進化」となります。

一方富士通EMEIAの最高技術責任者(CTO)であるジョセフ・レジャー(Joseph Reger)博士は、HIとAIとの「協力」が今後数十年にわたって維持されるかどうかについては疑問を呈しました。様々な可能性が考えられるAIの未来の姿の一つを予想する話し合いの中で、彼は80年後にはHIとAIとの間に明確な区別はなくなっているかもしれないと指摘しました。AIにも人間と同じ法が適用され、市民権が認められ、「両者は同じ一つのものになっているでしょう」と彼は予言します。

倫理からコネクテッド・インダストリーズへ‐分科会セッションでの集中議論

AIが社会のほとんどすべての分野に大きな変化をもたらすであろうことは、疑いの余地がありません。いくつかの分野では、その変化は既に起きています。シンポジウム期間中、参加者は9つの異なるテーマで行われるセッションに参加できるようになっていました。

「AIと共に作る新たな労働環境」に関する本会議では、登壇者はたとえば最適な人材の雇用や従業員の生産性向上のためのAIに基づく技術を紹介しました。セッションでは、AIは実際に私たちの労働環境を改善させることができるものの、社会学者、そして特に認知科学者などとのさらに深い学際的な交流が必要になるという合意に至りました。

「AIの倫理的および法的側面」に関するセッションでは100名以上の参加者が、AIがどのように人間の尊厳に影響を及ぼすか、あるいはデータバイアスがどのように社会格差を広げるか、といった問題について話し合いました。参加者は、AIに関する国際的な原則の必要性を強調しました。

別のセッションでは、AIアプリが「学習と教育」の分野でどのような変化と課題をもたらすかに焦点が当てられました。各分野からのアプローチや社会学者の見解などが、これらの開発に大きく役立つことが明らかになりました。

第3のセッションでは「スマートシティ」の可能性とリスクについて話し合われました。登壇者は、AIがどのように安全性を向上させエネルギーコストや交通渋滞を削減させるのに役立つかを指摘しました。これらの分野における主な課題は、人々のプライバシーの保護やAIに関する人々の教育などに関するものです。

シンポジウムの1日目は、創設者や研究者がそれぞれのAIスタートアップを短時間でプレゼンする「AIシューティング・スター」に関するセッションで幕を閉じました。

シンポジウムの2日目には、「医療におけるAIの応用」に関するセッションで、高精度医療やガン治療などにおける新たな進歩について、日独仏の主な当事者が情報を提供しました。参加者は、AI技術の潜在力をフルに発揮するために解決しなくてはならない主要な課題の一つとして、医療データベースの質と規模が挙げられることを強調しました。

「交通と自動運転におけるAIの応用」に関するセッションでは、三カ国の専門家が自動運転車と交通規制の未来について話し合いました。包括的なテーマは、AI技術を現実の世界に導入する際の課題でした。自動自走車などの車両に焦点を絞り、現在の安全保障、データ収集、信頼、そしてインフラなどの課題を乗り越えるにはどうすればいいかが話し合われました。

また別のセッションは「安心、安全、および通信におけるAIの応用」に関するものでした。議論は、防衛のためのAIと攻撃のためのAIという二つの異なるアプローチから形作られていきました。参加者はまた、データバイアスや機械の故障の責任などの倫理的な疑問も提示しました。

工学施設がどのようにして、データ共有から利益を得つつもそれぞれのプライバシーを守るかということが、「コネクテッド・インダストリーズにおけるAIの応用」についてのセッションで話し合われました。企業間でのデータ共有は既にデリケートな問題になっており、参加者はこの分野での国際的なデータプールの実現について楽観視はしていませんが、一方で少ないデータでの機械学習の方法も探っていました。

人間中心のアプローチ‐共同声明

人工知能に関して、ドイツ、日本、およびフランスを結び付けているものとはなんでしょうか? シンポジウムの最後のセッションで、安西祐一郎博士(日本学術振興会)は2日間にわたって取り上げられたテーマを振り返りました。その多くが、民主主義の将来や、真理や倫理の将来といったより幅広い問題に関係してくるものでした。安西博士は、これらの課題に取り組むためには国際的な交流と連携が重要になると強調しました。

さらなる交流を求める声も多くの参加者から上がり、AIにおける連携の強化は共同声明にも記録されることになりました。共同声明はAIとその応用について「人間中心のアプローチ」をとることを強調しました。AIにまつわる多くの疑問についての国際的な話し合いはまだ始まったばかりかもしれませんが、ドイツ、フランス、そして日本からのシンポジウムの参加者は、次のような共通の目標を掲げることで合意しました:「人工知能の究極の目的とは、人々の役に立ち、個人と社会全体の生活の質の向上に貢献することである」。

Joint Statement

  • joint statement of the German, Japanese and French participants on intensified collaboration in AI

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